どんな事も、好きになるきっかけは一つの出来事だけじゃなく、複数の偶然が重なりだと思う。
私の相撲好きになったきっかけは、BARから始まった。
きっかけ①「お誘い」
当時の私は、幼い娘が2人いつつも格闘技や登山など複数の趣味を持っており、仕事では新しい部署に異動し翻弄されながらも、満足している日々を過ごしていた。
そんな中、異動前にご挨拶できなかった取引先のDさんと久しぶりに2人で飲みに行くことになった。Dさんが予約してくれたのは浅草のうなぎ屋さんだった。
Dさんも会社を独立したばかりで、当時の仕事の思い出話やここ最近の関わったプロジェクトの話をしてもらい楽しくお酒を飲んだ。そんなDさんより、「知り合いが近くでBARをやっているので行ってみましょう」と二軒目を誘ってくれた。
連れてってもらったBARは、東京上野から少しはなられた住宅街の中にあり、知る人ぞ知るという所だった。私は普段あまり二軒目にもBARにも行かないので、終始そわそわしていたのを今でも覚えている。
BARの楽しみ方を分からないなりにも、せっかく連れてってもらったわけだしウィスキーとチョコレートをちびちび飲みながら全力で会話を楽しんでいた。そのころには24時もほろ酔い加減もすでに通り過ぎていた。
BARでの会話の中でDさんから「今度Aさん(取引先)と2人で大相撲行こうと思ってるんですよ、まだチケット取ってないですが、、」と言われ、返す刀で「へーー!いいなぁ羨ましい」と当時は相撲をTVでも観たことなかったのに話を合わせた。そこから、「後楽園でのプロレス観戦したことあります?あそこも近くていいですよ」と会話が格闘技の話になって楽しい時間は終わった。それが11月ごろの話である。
翌年3月ごろに、一通のLINEがDさんの方から来た。

5月場所全然取れなかったです!9月場所は有料ファンクラブ会員になりまチャレンジしてみます!
びっくりした。いつのまにか、Dさんの中で私も相撲観戦メンバーに入れていただいていたのである。
7月ごろには9月場所のチケットが取れたと連絡がきた。もともと、Dさんは歩くホスピタリティと思ってたが、プライベートでも仕事が早かった。そうなってくると、私もそんなDさんに呼応すべく当日は全力で相撲を楽しもうと思い始めたのが最初のきっかけである。
きっかけ②「推し」
全力で楽しむにあたって最初に考えたのは”推しを作ろう”である。ルールを詳細に事前に調べても実際に観てみないと結局わからないので、アイコンとなる推しを作るべきだと思った。
調べていくと、当時の相撲ニュースは大の里関でいっぱいであった。


素人の私でも、いつかは大相撲の顔になるんだろうなぁと思ったが、推しというのは成長を楽しみたいものである。
格闘技が好きな私は「力士 筋肉」でまず検索してみた。すると、僧帽筋の発達した「朝紅龍関」を見つけた。


力士の腕回りなどの肉体データなんて、昨今の少年ジャンプでもそうそう出てこない内容である。
- 幕内平均身長は 186.3cmに対して、177㎝の小柄→ふむ、推せる
- 小学生の頃は毎日腕立て伏せ1,300回→推せる!
- 突然視界が真っ白になる病気もちで普段は眼鏡をかけてる→推せる!!!!!
あとで知ったが、弟も幕下で上位になっておりかっこいい相撲を取るので今は兄弟そろって推しとなっている。
余談であるが、「相撲 2024年11月号」では、朝紅龍関の家族のインタビューが載っている。朝紅龍推しならマストバイアイテムである。
十両の朝紅龍関という推しが決まった。すでに準備万全である。
きっかけ③「両国の空気感」
場所は6日目の平日に行くことになった。
平日の昼下がりに空いている総武線で好きな音楽を聴きながら両国に向かい、電車のドアが開いた目の前にもうお相撲さんがいた。
こんなにも早く見つけられるのか!と当時の私は力士をポケモンだと思ってた気がする。力士からは鬢付け油のとてもいい匂いはするので、野性味はそこまで感じなかった。


両国駅から国技館まではすぐそこなのだが、いたるところに相撲に関するモチーフがあり隠れミッキーを探すようにワクワクしながら歩いた。
国技館に入り、相撲ガチャやお土産をそれなりに済ませて、お酒とつまみをたらふく買った。悲しいことに、十両力士のグッズは少ない。相撲ガチャにももちろん入ってこない。朝紅龍関の場合は、のぼり風応援タオルはあったのでもちろん握りしめて買った。(あとでもう一枚買った。)
席は1階の4人マスA席で、3人で座ることになったのでそこまで窮屈ではなさそうであった。
実際に座布団に座って土俵を見た瞬間にこの空間はとても素晴らしいと感じた。まず、マス席は「足を崩しながら、酒とつまみがたしなめる」。東京ドームなど普通のスポーツ観戦の狭い席に座りながらお酒やつまみをするのは少し緊張感があるが、このマス1.3m四方に鉄パイプで囲んだ中はほぼもう家であった。
次に、プロ野球やサッカーなどを観て思うが、敵のファンは敵であるという空気感はあち観戦の帰り道で喧嘩をしているのを観たことがあった。ただ、大相撲にはそれがない。すべての取組で拍手や落胆の声が上がる。国技館全体で相撲を愛している感じがあり、伝統に触れてこの空間が直感で好きだと思った。
きっかけ④「推しの取組」
この日の、十両八前目の朝紅龍関の取組は、十両七前目の水戸龍関だった。パッと見た感じ全然勝てそうじゃなかった。190cm190kgに対して177cm125㎏と、総合格闘技を観ていた私からするとこれは無理だなと思った。Dさんも、同じようなことを言ってた。番付も上ですし。
それでもせっかく買った朝紅龍関の応援タオルを両手で広げてみた。ただ、恥ずかしくて声は出なかった。
当時の実際の取組はこちらで観られます。


まさかの勝ちであった。最初の5秒くらいで押されて「やっぱ負けるかも」と思ったが、その後の攻めは圧巻だった。決まった瞬間、大きな声を出せた。というより出た。Dさんも出た。はじめての現地での声を出しての応援は気持ちよかったのを覚えてる。
結びの一番は、大の里関と正代関で大の里関の圧倒だった。この本場所後に大関に昇進したので、記念すべき場所を観戦できてとてもよかった。こうやって、みんな相撲を好きになっていくんだろうなと「テンテンバラバラ」と跳ね太鼓を聴きながら帰りしな思った。